―御鱈河岸―

おんたらかし

奥歯がかちかちなっている

紅茶をいれて、両手を合わせていただきます。
 みどりのベンチに靴跡のこしたスニーカーのことをまだ怒ってこっちをみてくれない。ふたりの食べたいものだけ詰めた弁当箱にパセリをみつけた僕は、ゆびでつまんで「これだって好きになれるよ」と口にほうりこむ。
 電子レンジがなくて冷えたはだかの白飯も、プチトマトについたミートボールのたれもたまらなくおいしい。ランチョンマットは僕があげたものだけど気に入ってる。フォークはちょっと子供っぽいけど、お箸だったらうまくつかめなくて落としたらどうしようか。見たことない形の食べたことのない味のこれ何って話もしたい。
 空の青さは文句なしで、ひなたのにおいにうっとりして飽きない雲はかたちを変えて、白い花がたくさんついた木の方へすごいはやさで流れていってる。
 でも、謝れない。黙ってるうちに怒った理由も忘れちゃったよね。この後のことだけど、食べ終わるまでに行きたい場所いくつか考えておいて。
 ごちそうさまはまだまだ遠い。ブロッコリーにささるフォークより大きな、きみが髪を耳にかける音。