―御鱈河岸―

おんたらかし

落日の栄光 同志諸君はいずこに?

私があの動画を上げて以降、SNSのフォロワー数は確実に上昇し続けている。中には少女愛好家らしい者達も居たりし、胸糞悪さで、お気に入りのイルカの抱き枕に何度拳を突いた事だろう。そこで思ったのだが、世間では今のこの私、つまり少女の風体をしている私の見てくれは、そんなに悪いものでは無いらしい。むしろ、一部の男性達にはすこぶる評判が良く、肩まで掛かる長い黒髪も、黒曜石の様な夜色の瞳も、年齢の割に小さな身長も、そして何故だか、女性らしさを欠如させている様な気がする、この小さな胸も。その全てが全て、あいつらの邪な欲望を肥大化させていく要素になるらしかった。そうなると、自身を守ってくれる親衛隊が必要になって来る物である。過去の私の周りには、私という国家に殉じて呉れる愛国心溢れる、若き獅子達が大勢居たが、今現在の私の周りには番犬一匹も居ない。

「私の為の殉教者が必要だ」

「出来る事なら殉教者同志、競い合い高め合って呉れる様なそんな者達が」

ラインの登録者一覧を見ていく、女でも良いが、単純に戦闘力の事を考えていくと男の方が良い。

一人目星を付け連絡してみる。数コールもしないうちに相手は出た。

「水野上先輩どうしたのですか?」

なかなか雄々しい男子の声が電話先から聞えて来た。

「竹林君今大丈夫かな?」

相手は直ぐ様気持ちの良い返事をした。

「勿論大丈夫です。何かあったのですか?」

私は深刻そうにするため、少しためて心底困っているかの様に相手に願った。

「………実は最近自分のサイトを作ったり動画を上げてたりしていたんだけど、変な人達が紛れ込む様になって薄気味悪いの。…竹林君私を守ってくれない?」

「守ります!水野上先輩を守ってみせます」

「ありがとう」

「具体的にはどうしたら良いのですか?」

「そうね。私がラインで連絡したら来て欲しいな」

「どんな時もですか?」

「出来ればそれが一番嬉しいな。無理かな?勿論あんまり無茶な事は言わないつもりよ」

竹林は少し考え、曇りの無い返事をしてみせた。

「分りました。僕に出来る事でしたら喜んで」

「そう。ありがとう。じゃまた何かあったら連絡するね」

「はい」

こちらから通話を終了させる。

竹林は1つ年下だが、空手部で群を抜いての実力者であり、筋骨隆々なその肉体はまさしく若獅子に相応しい物が有る。これで一人は確保出来た。まだだ、まだ全く以て足りぬ。同志をもっと掻き集めねば、ネットは発言するには使えるが、同志を特に、強い意志を持った同志を集めるには、昔ながらの方法で行くしか無いのだろう。

スマホを持って街へ出なければな。