ショートコント 頼むから寝かせてくれ
☆演者 坂道ケツカッチン(空山田修吾・松加下別所)
十日間程連続で鶴折のバイトを入れてしまった男(空山田)は明日は十一日ぶりの休みとあり、丸一日寝て過ごそうと決めていた。
自宅のワンルームに帰り、シャワーも浴びず、服だけ着替え寝ようとするところから始まる。
空山田「折り過ぎたわ~千羽鶴五セット分は折ったわ~布団に入って寝ようとしている今も、手が鶴折ってる気がするわ~」
空山田「にしても、休憩時間に見せられた鶴の交尾のビデオあれ要るか?まぁええは、はよ寝よ」
空山田が住んでいるこの建物は、七階建ての鉄筋コンクリート造りであり、建物の半分は近くの建設会社の社員寮となっていた。
時刻は午前二時、そんな中、隣の部屋から何やら音がする。
松加下「ふんふんふんふん♪、オーーイエ♪(ベースギターの音挿入) ふんふんふんふん♪、オーーイエ♪(ベースギターの音挿入)
」
空山田「また隣の奴や。あかん。今日という今日は注意したろ」
松加下「お前だけが頼り~♪オーイエ♪(ベースギターの音挿入)
」
空山田「ギターの音うるせぇわ~なんや、お前だけがたよりって?便り要らんし」
渋々布団から出て壁を叩く空山田。
空山田「ちょっと。お隣りさん、静かにしてくれませんか?何時や思とりますの?」
松加下「(ベースギターの音挿入)イエイエイエオーーイエ♪」
空山田「こいつ全く聞えてへん。注意し損や。そや、こいつに気付かすため、ビックリさせたろ」
眠たい目を擦り、仕事道具を入れたリュックを担ぎベランダの扉を開け、防火扉を越えて隣のベランダへ侵入を試みる。
空山田「七階やから下怖いな。しかも寒っむ。風も吹きよるで。あかん下見てもうた怖いわ」
なんとか隣のベランダに侵入を果たす空山田。早速リュックから百羽の折鶴を出し、ベランダ一面に並べ始める空山田。
松加下「何やろ?ベランダから音がしよるわ。まぁ盛りの付いた近所の猫が悪さしよるんじゃろ。それより明日は、オーディションの日やからこの曲仕上げておかな、この五年間が無駄になってしまうわ」
空山田「やっと折鶴百羽並べきったわ。千羽鶴の一〇分の一やけど、こんな糞狭いベランダに並べたら圧巻やな」
腕を組み百羽鶴を見つめる空山田。
空山田「にしても寒っむいな、眠気も吹き飛びよるわ」
並べた百羽の折鶴を極力踏まないようにし、部屋の扉まで近づき扉を開けようとする。
空山田「おっ。こいつ不用心やな、鍵してへんで、少しずつゆっくり開けたろ」
部屋から松加下の歌が聞えて来る。
一気に扉をスライドさせ開ける空山田。
空山田「お前いい加減せぇよ。うるさいんじゃ!」
扉を開けた事により、突風が巻き起き百羽の折鶴達が一斉にベランダから空へ
松加下「オーーイエ♪そっと今だ飛び立てオーーイエ♪」
空山田「俺の鶴達がーーーーー誰か助けて下さいーーー鶴をーー」
松加下「すっげー。俺の歌と一緒に折鶴が飛び立って行った。この演出貰っとこ」
絶望する空山田。対照的に唯一の希望を見つけたかの様な顔をする松加下。
空山田を見つめ松加下はおもむろに口を開く。
松加下「すみません、夜が明けるまでに折鶴百羽折ってくれませんか?」
絶望感満載の表情の空山田、松加下を見つめて。
空山田「頼むから寝かせてくれ」
松加下「オーーイエ♪それはダメだぜオーーイエ♪(ベースギターの音挿入)
悲しいことに十日間も折鶴を、折り続けていたことによって、手が折鶴を折る動作をしてしまう空山田。それを見て喜ぶ松加下。
松加下「折る気満々やないですか♪なんなら千羽逝っちゃいますか♪」