―御鱈河岸―

おんたらかし

2017-05-01から1ヶ月間の記事一覧

ショートコント 頼むから寝かせてくれ

☆演者 坂道ケツカッチン(空山田修吾・松加下別所) 十日間程連続で鶴折のバイトを入れてしまった男(空山田)は明日は十一日ぶりの休みとあり、丸一日寝て過ごそうと決めていた。 自宅のワンルームに帰り、シャワーも浴びず、服だけ着替え寝ようとするところか…

デパートメント

枯葉の上を歩く、何億もの微生物を踏みつけながら理由もなく歩く。 途轍も無く長く思える遊歩道の上を滑るように流れる私の目には、男が二人と女が一人老人と老婆と男の子の生きている形を追う事だけで、この場所の在り方というものを理解出来ているものとし…

うしろの女

時刻は深夜3時15分、草木も眠る丑三つ時、静まり返った無人の学校に足音が二つ。 「昼間と違ってやっぱり怖いな、夜の学校」 「けどこの時間しか無いて言ったのは、拓郎お前の方だろ」 「そりゃそうだけど…おい。今何か動かなかったか?」 右往左往とライ…

素足な少女

酷い雨の日に『素足で町にでようよ。』と言ってくれる人が好きなのではなくて、その言葉が新鮮だからではなくて、雨の日に素足で町に出たかったわけでも勿論無かったけれど、誘われたら付いて行ってしまいたくなるのが私なんだ。 本当にそれだけだったなら、…

超地球的存在 ~大手町六郎、神はじめました~

気が付くと俺はコンビニでビールをカゴに入れている所だった。 店内放送では、数年前流行ったお笑い芸人が何か喋っている。いつもの癖でスマホを見る。時間は10時30分だ。 頭の中で違和感の周りをもやもやとしモノが駈けずり廻っている。 アイスコーナー…

もぐら少女

思った事を口にする不自由と 思った事を心に秘める自由の狭間で 綿毛の様に揺れる私は、根っこが無い変わりに花も無い。 私が空を飛ぶ時は 機械の背中でじっと座って待つ方法と 落ちるしかない数秒の空中散歩の二種類しかない どっちも飛んでいるようで、飛…

牢の中の二人

ある時不意に自我が覚醒すると、鉄格子と壁で覆われた部屋の中に幽閉されているようであった。 物や言葉の記憶は憶えていれど、自分に対しての情報がスッポリと抜け落ちている。つまり、ここに居る私という存在は、自身の歴史が今からさも始まろうとしている…

トローチ・サブリナ

雲ばかり映える夏先の16時過ぎには 相も変わらず自転車とバス停との逢引が恋しくなる。 君が待つらしいあのバス停までの坂道が 水を越える大きな橋があって、町で一番の競技場があって 一つ一つ場所も変えず名前も意味も何も変えない区切りを 少ないけれど…

三枝千佳月が死んだ

朝、目が覚めるとすぐ横から寝息が聞こえてきた。 片耳からは心音も聞こえている。 どちらもまだ眠ってらっしゃる、千佳月さんのものらしい。 マイナスイオンすら出ているのではないのかと思ってしまう心地良い音のリズムで、もう一眠りすることにしよう。 …

紐だけ長い少女

此処から何処にも繋がっているなんて信じた私が馬鹿だった 此処から何処かに繋がっているのは、此処がちゃんとしてないからで 此処が私で、私がちゃんとしてたなら 私は此処で、此処がちゃんとしてるはず それなら私は何処にも繋がっているわけもなくて 誰か…

落日の栄光

彼が見た最後の映像は血色の景色であり。その中では最愛の人が銃弾により今死に絶え様としており、その後続く最後の音声は施錠をしたドアを部下達がけたたましく叩き絶叫している和音であった。 「何故分からない!」 それだけ言うと彼も彼女の後を追うよう…

WatHer CroWn

『夏だから暑いのだろうね。』 夜が短いのもその夏なんてものの所為で だからそれできっと、詰まった時間が運ばれてきてしまうんだ。 動かなきゃそれで良いはずなのに ふかふか動く細い針がキシリキシリなんて言ってしまっていて 足音なんて聞こえやしないん…

三枝千佳月が死んだ その4

ここから見える風景は結構好き。 小さい頃、××と一緒によく遊んでいた公園がここからだと直ぐ下に見える。 あの頃は楽しかったな いつもお転婆な私を××が 「千佳月~。危ないからよそうよ」 とか言ってたっけ。 あの頃の××は、とても可愛らしかったな。一度…

奥歯がかちかちなっている

紅茶をいれて、両手を合わせていただきます。 みどりのベンチに靴跡のこしたスニーカーのことをまだ怒ってこっちをみてくれない。ふたりの食べたいものだけ詰めた弁当箱にパセリをみつけた僕は、ゆびでつまんで「これだって好きになれるよ」と口にほうりこむ…

超地球的存在~或いは大手町六郎の怠惰な一日~

怠惰であった。 大手町六郎は怠惰であった。夏休みの宿題は最終日にやり始めるタイプであったし、大学の卒論は最終提出期限が過ぎ、やっと重い腰を上げゼミの指導者の所へ赴き、直談判し、なんとかでっち上げる。そんな男であった。 「うっく。平日の昼まっ…

ユキノシタの誤謬

応接間で寝ていた私のことなど見えないように、母はピアスのキャッチを留めようとしばし中空を見つめて黙った。 ピエゾのアイストローチというそれは健一から誕生日にもらったもので、私がもっとも気に入っているアクセサリーのひとつだった。嫌な言い方だけ…

最期のオタク

とどのつまりオタクは今や絶滅危惧種です。 平成31年に施行された、不快因子排除法により街からエロ本という物が消え、その次に少年漫画の紙面から、少しでも性的描写だと捉えられてしまった絵が消えた。だけど、熱意ある漫画家達の中には、ネットの匿名の…

三枝千佳月が死んだ その3

真夏の熱射線が肌を痛めつける。 たしか数年前までは冷夏だったので、過ごし易い夏日だったけど今年の夏は気が滅入るぐらいに過ごしづらい。そんな真夏日のなか、今日も僕は千佳月の居る郊外の病院へ行くため自転車を必死に漕ぎ、このひどく長い坂道を頭の中…

明朝体

湿気だまりに咲いたアザミが家路をいそぐ人を見送っている。 ちいさな不幸せをほおばった女の自転車が信号機を前にスピードを落としたのを見て、手を伸ばして助けてやりたいがそんなものは持っていないから風に乗って、せめて雨が降りそうなことを教えてやる…

坂闇草

「3丁目の学園坂でまた消えたらしいよ」 隣を歩く少女は、自転車を押しつつ目前の坂を指さす。 「それってこの坂だよね…」 「そうそう。今月だけでも5人目。共通するのは、全て夕方に起きた事らしいよ」 そういうと、2人の少女は押していた自転車を止めた…

案山子の里にも星くらげ

代わり映えのない時間が過ぎていた。断片的というか、映画の総集編みたいなジャンプカット。 毎日退屈だとかもうすぐ夏だねと言いたいのではなくて、もっと短い区切りで欠陥品の砂時計のように記憶がさらさらと抜け落ちていく。 ほらさっきがもう失われてい…

続、三枝千佳月が死んだ

僕は今日もまた、千佳月の病室に居る。 もう学校では授業は終わっており、夏期講習とか言われる、高校生達の武者修行が連日校舎のあちらこちらで行われている。 勿論僕は、そんなものに興味と忍耐力を有しておらず。学校には行かず、近所の本屋で最近出た文…

三枝千佳月が死んだ

三枝千佳月が死んだ。 白血病で去年の暮れあたりから、郊外にある私立の病院に入院していた。 たまに僕が暇を潰しに行くと、決まっていつもベルリオーズの幻想交響曲が使い古されたCDプレイヤーから流れていた。 僕が入って来て、先ず彼女に言われる言葉は…

過去作

以前某所で上げていたの、こちらでも、上げさせて貰います。

左向けばひだまり

毎年この時期になると街はにわかに活気づく。秋口までのまとまった仕事がおちこちにある掲示板に貼りだされるためで、皆が情報収集に余念がなくなるからだ。 仕事ははっきり言って無限大にある。有り体に農作業などの体力仕事、遠方の住み込みだったり、学生…

猫闇草

都会には猫が少ない、そんな事を思った事はないだろうか? 地方から引っ越して来た者からしたら、そんな気がしてならない。 勿論、地方に比べ、都会は持ち家率が少なくマンションが多いので、家猫に比べて部屋猫が多いという事もある。 しかし、本当にそれだ…

びゅーふぁいたー

私は私。人は人。うん、知ってる。 2月からずっと午前様。アラームが悔しくて、タイマーをセット。ベッドにぼかんと倒れ込む。なのに!夢の中の私はへたっぴで、遅刻やら反抗的な態度やら行き過ぎた抗議で平気で上司を殺してしまう。現実の私はただただ寝不…

昨日の人

二日酔い特有の気持ち悪さで目をさます。 ベランダからは、毎朝の悪客である鳩のやかましい鳴き声と、あの忌々しい羽音がし、その負の混合物で部屋が蹂躙されている様な気さえしてくる。 いつもであればこの悪客に対し、何らかの対抗措置を取るのであるが、…